「素数ゼミの謎」(吉村仁)

素数ゼミの謎

素数ゼミの謎

 昨年北米を騒がせた素数ゼミをテーマにした、科学もののノンフィクションです。17年周期に大発生して大騒音を巻き起こすあれですね。

「なぜこんなに長年かけて成虫になるのか?」
「なぜこんなにいっぺんに同じ場所で大発生するのか?」
「なぜ13年と17年なのか?」

 という3つの疑問からスタートして、素数ゼミの謎を解き明かしていきます。
 ということで、理系人間にはたまらない内容の本になっています。でもそれ以上に、読みやすい文章とイラストや写真の多用によって、理数系が苦手な人や本を読むのが苦手な人にも読みやすい作りになっていることに好感が持てます。
 冒頭で脈絡なく著者の写真を出してみる。大発生した素数ゼミの人口密度が一部屋あたり400匹だと説明したあとに、見開きでドカーンと400匹の蝉の標本を見せてみる。こんなアホなこともしてみせる、どこまで本気かわからないような遊び心を持った本です。 素数年おきに発生することが生存戦略上どんな意味を持つのか?理路整然と結論に導かれていく快感を楽しめ、なおかつ素数の魅力、数学の美にふれることもできるお得な一冊です。