「浦上の旅人たち」(今西祐行)

浦上の旅人たち (岩波少年文庫(132))

浦上の旅人たち (岩波少年文庫(132))

 江戸時代末期から明治のはじめに長崎で行われたキリシタン弾圧事件、「浦上四番崩れ」と呼ばれる事件がモチーフになっている歴史小説です。浦上のキリシタン3414人が流刑に処され、西日本各地に送られ非人道的な扱いを受けて改宗をせまられたそうです。そのうち無事故郷に帰れたのは1930人。いかに大規模でひどい弾圧だったかがわかります。キリシタンはこの弾圧の日々を「旅」と呼んでいたそうです。信仰を支えとして現実に立ち向かった彼らの強さがしのばれる表現です。
 厳しい運命に翻弄されながらもたくましく生きていく人々の姿が淡々と語られている、読み応えのある小説です。