「こちら「ランドリー新聞」編集部」(アンドリュー・クレメンツ)

こちら『ランドリー新聞』編集部 (世界の子どもライブラリー)
こちら『ランドリー新聞』編集部 (世界の子どもライブラリー)」(アンドリュー・クレメンツ)
 報道の自由と正義をめぐる燃えるストーリーです。主人公の少女カーラは周囲から目立たないおとなしい子だと思われていました。ところがある日、担任のラーソン先生を痛烈に批判した新聞を教室に掲示し、先生を激怒させます。ラーソン先生は無気力教師で、ずっと生徒を放任していました。でも、カーラの批判を受けて昔の情熱を思い出し、報道について授業をはじめ新聞の発行を許可します。すると今度はラーソン先生をよく思わない校長が新聞にけちをつけて先生を陥れようと画策します。報道の自由を弾圧された生徒たちはどう立ち向かうのか?
 一見おとなしい女の子が腹の中では辛辣なことを考えているという設定はリアリティがあります。クレメンツの小学校教師としての経験がものをいっているのでしょう。
 合衆国憲法修正一条、言論と出版の自由がテーマです。ネタがネタだけに説教くさくなりそうですが、クレメンツに限ってそんな危惧は無用です。説教でも、実用的な説教はおもしろいんです。表現したいというのは人間の根源的な欲求ですから、それが弾圧されれば盛り上がります。単に報道の自由を盾に取るだけでなく、報道が人を傷つけることも自覚した上で報道の使命を模索しています。子供が問題を解決する過程が理知的に描かれていること。これがクレメンツ作品の魅力です。