「バード絶体絶命 死を呼ぶメジロの謎」(中松まるは)

バード絶体絶命―死を呼ぶメジロの謎 (講談社青い鳥文庫)

バード絶体絶命―死を呼ぶメジロの謎 (講談社青い鳥文庫)

 わたしの場合中松まるはは、激辛映画児童文学評論集の管理人ということでなじんでいました。毒舌で論理的で、しかも児童文学に対する愛が感じられる貴重な児童文学書評サイトです。失礼ながら作品を手に取るのはこれは初めてでした。期待を裏切らない内容でした。
 小学6年生の少年バード(烏川裕貴)の飼っているメジロが怪しげなストーカーに狙われている!?危険を感じたバードは小鳥店にメジロを預けますが、そのかいなく盗まれてしまいます。警察も取り合ってくれない。街には怖い暴力団が徘徊している。そしてバードと幼なじみの美咲をラブラブにしようと暗躍するクラスメート達……。バードと美咲は思いも寄らない事件に巻き込まれていきます。
 動物愛護ネタですが、犯人の大人達は自分らのしていることをまったく悪いことだとは思っていません。犯人はこう語ります。

きちんとこれこれの理由で今から戦争をするという手続きをふめば、人間はいくら人を殺したって罪悪感なんか感じないようにできているんじゃ。(中略)
人はのう、わるいとわかっていても、それを上回る理由があれば、逆に胸を張れるようにできているんじゃ

 こんな大人の理屈に、バードは「わるいことはわるいんだ」と子供の理屈で応戦します。まっすぐすぎてまぶしいです。こういう正論を堂々と主張する児童文学も必要だと思います。ここは単純に感動しました。
 しかし本作の柱は幼なじみ萌えと、トンデモミステリであること。以下どこがトンデモであるかネタバレします。既読の方とネタバレが怖くない方のみ続きを読むをクリックしてください。
 幼なじみの美咲は、バードが「絶対」という言葉をはくたびに意味ありげな態度をとります。で、最後美咲は、バードが一度も「絶対こいつが犯人」といわなかった人物を犯人だと看破します。つまりバードは推理を必ずはずす特殊能力の持ち主なのです。清涼院流水いうところのメタ探偵、「超迷推理」使い手ということになります。バード=ピラミッド水野なわけですね。これは反則では?
 まあ、このバードの特殊能力を見抜いた美咲の「幼なじみの絆」が主眼と考えればそう目くじらを立てるほどのことではありません。
 ネタがネタだけに、一回限りしか使えませんが、この幼なじみバカップルの活躍はまたみてみたい。シリーズ化しないかな?
 今回は清涼院流水のJDCシリーズを知らない人にはわかりにくいネタになってしまってすいませんでした。興味があって、時間をどぶに捨てても構わない方は「コズミック (講談社ノベルス)」を参照してください。読了後に本を壁にたたきつけたくなると思いますので、図書館で借りずに自分で買って読むことをおすすめします。
 余談ついでですが、わたしはJDCの探偵の中ではピラミッド水野が一番好きです。周囲に理解されない天才という設定が実に燃えます。