「カードゲームの罠」(石崎洋司)

 すばらしい後味の悪さ。こういう救いのない話は大好きです。どうせ遊戯王人気に便乗した安易な企画なんだろうと失礼な先入観を持っていましたが、とんでもない間違いでした。きちんとカードゲームがテーマであることに必然性を持たせています。
 東京に住んでいた真一が、父親の転勤で開地町に引っ越してくるところから物語は始まります。この開地町がド田舎で、新参者はゴミ出しをすることも許されず、学校では地主の息子がいばりくさっています。田舎の嫌な面ばかりが強調されています。はじめは田舎のいやらしさで怖がらせるタイプのホラーかと思いますが、しかし後にもっと怖いテーマが出てきます。
 開地町の小学生陽介は、「アルファ・メイル」という概念を真一に教えます。動物行動学でいうリーダーのことだそうです。そして、地主の息子の一馬はクラスのアルファ・メイルなのだから、彼が力を誇示するのは仕方ないと諭します。で、この動物の世界の上下関係が、カードゲームを媒介として人間の世界でも行われているという風に話は展開します。
 決して間違ったことは言っていません。どう取り繕っても人間社会が弱肉強食であることはごまかせません。しかしこんな身も蓋もないテーマで、本当に救いのない話をよく青い鳥文庫で出せたものです。本作はシリーズの一作目ですから、以降の展開も見ないと評価はできません。いや、どんな風呂敷の畳み方をするのか興味深いです。確かもう完結しているはずです。気長に読み進めていくことにしましょう。