「ステップファザー・ステップ」(宮部みゆき)

 宮部みゆきの10年以上前の作品が青い鳥文庫になりました。先生の裁判のエピソード「ワンナイト・スタンド」だけなかったことにされていて、6話の短編が収録されています。そういうことなので、単行本か講談社文庫で持っている人は買う必要はないです。青い鳥文庫、あの程度の話にNGを出すか。別に構わないと思うけどなあ。
 へまをした泥棒が中学生の双子の兄弟、哲と直に助けられるところから物語は始まります。この双子、両親がそれぞれ駆け落ちをしていて、今は子供だけで生活している身。泥棒の弱みを握った双子は泥棒を脅迫して、自分たちの父親のふりをするように命令します。
 この双子が何ともたちの悪いキャラで、話をする時も二人で交互にしゃべって薄気味悪い。そして、脅したり情に訴えたりして泥棒をいいように使うんです。子供はまったく正体不明のモンスターとして描かれています。
 イラストには電撃文庫でデビューしたばかりの千野えながを起用しています。ラノベラノベしたかわいいイラストで、とびきりの笑顔を見せる双子。その笑顔がまったく無邪気そうなだけに、ビジュアルで見せられると怖さが倍加します。
 恐ろしいことに泥棒さん、だんだん双子に情が移ってしまうんですね。子供は怖い。最初は嫌々つきあっていた双子が、やがてかけがえのない存在になっていく過程。それが淡々と描かれていて泣かせます。
 謎解きはほとんど最後の数ページで片づいてしまうので、ミステリとしては多少弱い部分はあります。でもこの作品は、シチュエーションや会話のおもしろさがメインですから、その点では十分楽しめます。