「アイドルはラクじゃない」(西川つかさ)

アイドルはラクじゃない (講談社青い鳥文庫)

アイドルはラクじゃない (講談社青い鳥文庫)

 主人公は小学6年生の政美。妄想癖があって、笑い方は「うひょひょ」、挨拶は「よろちくび」、とことんお下劣な女の子です。彼女の生き甲斐は親友のブー子ともに学校で漫才をすること。そんな彼女がなぜかアイドルのオーディションの一次審査に合格してしまい……。
 そうです、西川つかさはこうでないと。政美とブー子の漫才はとことん下品でブラック。青い鳥文庫の倫理基準の限界に挑戦しています。いままで青い鳥文庫で一番下品なのは蘇部健一だと思っていましたが、認識が甘かったです。おそらく蘇部健一と西川つかさが同率一位ではないかと思われます。
 彼女たちが得意とするのは国語漫才。国語のテストに出るような問題に、あほな答えをするというものです。たとえば「大○小○」の○の中に当てはまる言葉を入れよといった具合。大同小異にした人は間違いです。人偏がつく同じ漢字を入れてください。
 一番過激だったのがこのネタ。

「うってかわって この言葉をつかって文をつくりなさい。」
「わたしの父は薬を打って変わってしまった。」

 いいのか。薬物乱用をギャグのネタに使うなんて。
 しかしこの作品の魅力はお下品さだけではありません。いけすかないアイドル野郎に一泡吹かせてやろうというストーリーも十分楽しませてくれます。感心したのがトイレというアイテムの使い方。オーディション会場のトイレという最悪の場所での出会いが、のちのちの燃え展開への伏線になっています。どん底からスタートさせてギャップで燃えさせる。うまい構成です。西川つかさ、ただお下品さだけを売りにした作家ではなさそうです。
 続編の「アイドルはラクじゃない 笑って泣いて呪われて」は11月18日発売予定。11月は横田順彌の「勉強してはいけません」も出ますから、青い鳥文庫新刊のレベルが高い月になりそうです。