モモちゃんとアカネちゃん モモちゃんとアカネちゃんの本(3) (講談社青い鳥文庫)
- 作者: 松谷みよ子,菊池貞雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1980/12/10
- メディア: 文庫
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もっかけんかちゅう
モモちゃんとコウちゃんのけんかのエピソードかと思いきや、実は深刻にけんかをしているのはママとパパだったのです。モモちゃんと話をしているママは、ばらにはさみを入れている最中です。これがなんとも意味深長な行動です。「ぱちんぱちん」という擬音が絶妙のタイミングで挿入されていて恐怖をあおります。
ママのところへ死に神がきたこと
具合の悪いママは、パパの姿が見えたり見えなかったりします。夜パパが帰ってくると、そこにはパパの姿はなく、くつだけがあるのです。
意味は理解していなくても、このくつだけ帰ってくる場面は鮮明に記憶に残っていました。大人になった今読んでも十分インパクトのある場面です。
だれかさんのうしろにへびがいる
だれかさんのうしろにへびがいる
ぼく?
ちがう
こんなわらべうたをうたうコウちゃんに、みんなは「そう!」とさけびました。するとコウちゃんはヘビの姿になって去っていきます。こわくなったモモちゃんは家に逃げ帰りますが、みんなはついてきてはやし立てます。
だれかさんのうしろにへびがいる
モモちゃんのうしろにへびがいる
へびがいる
へびがいる わあい
よく知っているはずの友達が訳のわからない存在に変容してしまう恐怖。そして自分までもそういう面を持っていることに直面せざるを得ない恐怖。離婚のエピソードには直接関係しないものまでこんなにこわいとは、やはり「モモちゃんとアカネちゃん」は一流のトラウマ児童文学です。
森のおばあさん
ママは森のおばあさんに死に神のことを相談に行きます。おばあさんはママに枯れかかった二つの木が植えられている植木鉢を見せます。そしてこの木はおまえさんとおまえさんのごていしゅなのだといいます。おばあさんが二つの木を引っこ抜いて別々の植木鉢に植えると、ママに木はすくすくとのび、パパの木はなんと歩き出してしまいました。パパの木は肩のあたりにやどり木をのせています。おばあさんは、そだつ木と歩く木が一つの植木鉢にいるのは無理があると諭し、ママは離婚を決意します。
おわかれ
「ママとモモちゃんとアカネちゃんと三人で、森のむこうの町へおひっこしをするのよ。」
というと、モモちゃんはびっくりして、それからかなしそうなかおをしました。つぎにはねあがって、
「トラックにのせてね!」
とさけびました。
涙ぐましい場面です。自分もつらいのに大人に気を使えるまでモモちゃんが成長したと思うと、あかちゃんの時からモモちゃんを見守ってきた読者としては感慨深いです。
後から思えばこの場面はまだ、悲劇の始まりでしかなかったんですけど。