「小さな小さな海」(岩瀬成子)

小さな小さな海

小さな小さな海

 
 ぼんやりと浮き出してくるようなタッチで描いてる長谷川集平のイラストが大迫力の一冊。彼はプールの授業が嫌な小学生の表情を、まるで世界の終わりに直面しているかのような深刻な顔に描いています。いや、思い出してみれば、学校で嫌な授業や行事がある時って、本当にそのくらい憂鬱な気分になったものでした。
 水が怖くてプールの授業が嫌いな男の子よしろうが主人公です。プールの時間はいつも保健室へ逃げ込んでいます。そこで同じく常習的な体育サボリ少年こうじくんと知り合います。ここから幻想的なアイテム「小さな小さな海」がからんで苦手克服の物語になります。屋根裏部屋のたんすの中にある「小さな小さな海」の正体はぜひ読んで確かめてください。
 表紙の夕焼けの海のイラストが作品の雰囲気をぴったり表現しています。幻想的でちょっと寂しい。岩瀬マジックと長谷川マジックの相乗効果で非常に気持ちいい雰囲気の作品に仕上がっています。