「石の海航海記」(雨宮雨彦)

石の海航海記

石の海航海記

 どんなものとでも話すことのできる通訳の少年トゥームは、潜水艦「行くあてなし号」の船長に雇われます。「行くあてなし号」の目的地は石の海、そこで「石の石」というふしぎなアイテムを探索しますが……。
 雨宮雨彦作品は初めて読みました。こんなすごいファンタジーを書く作家が日本にいたとは……。
 この作品は展開が唐突で、読者は置いてきぼりです。登場人物の行動は不可解で、全然感情移入できません。仕方ありません。そもそもこの物語は、人間の物語ではないのです。だからこの物語は人知を越えています。読者はこの読書体験に意味を見いだす必要はありません。ただ純粋に物語の快楽に身をゆだねるだけでいいのです。
 あえて似ている作家を挙げるとすればスーザン・プライスでしょうか。神話や昔話が持っているような物語本来のダイナミズムを楽しませてくれる作家は貴重です。