「錬金術」(マーガレット・マーヒー)

錬金術

錬金術

 マーヒーの作品はだいぶご無沙汰しているような気がします。
 主人公のローランドは、幼いころから不気味な奇術師クワンドウの登場する悪夢に悩まされています。しかし学校では優等生として過ごしており、完璧なガールフレンドもいます。そんな彼がある時なぜか万引きをしてしまいました。その現場を見ていたのが教師ハドソン。ハドソンは万引きの件を秘密にする代わりに、ジェスという女生徒について調査せよと命じます。ローランドはいつもひとりで行動しているジェスに接近し、幽霊屋敷のような彼女の家を訪ねますが……。
 悪夢の謎、ローランドはなぜ万引きをしたのか?ハドソンの思惑は?ジェスの抱える秘密とは?数々の謎に読者は引っ張られ、さらに全編に漂うマーヒーらしい重苦しい緊迫感に後押しされます。これではページをめくる手が止まるはずがありません。
 ローランドという男が鼻持ちならない野郎で、ジェスに話しかけてつれなくされると、こんな疑問を抱きます。

じみで平凡な女子高生は、学校でもトップクラスの男子生徒に話しかけられたというのに、なぜあれほどまでに無頓着な態度をとったのだろう?

 勘違い高校生は世界で最強の存在ですね。端から見てると痛々しいこと、痛々しいこと。こんなローランドがどんな変容を見せるかは、読んでのお楽しみということで。久しぶりにマーヒー節を堪能できました。