「へび山のあい子」(古田足日)

 まず赤い小へびのと青い竜の神話が語られます。その中では赤い小へびが善で、青い竜が悪であるという位置づけされています。そして、この神話の戦いが現在によみがえり、あい子といういじめられっ子の少女が小へびの側として、青いりゅうに立ち向かっていくお話です。
 怖い話です。「ぬすまれた町」と同じように現実と幻想が入り乱れて、読者を混乱させる構造も恐怖を引き立てます。それ以上に、無力な少女が悪を象徴するりゅうと戦わなくてはいけないという状況がこわい。あい子はやきものクラブの先輩から赤いナイフをもらい、それを武器として戦います。刃物が赤いとなると、それは血の赤であると想像してしまいます*1。小学生が血塗られたナイフを持って戦う。厳しいですけどこれが現実なのでしょう。古田足日らしく子供の自主的な問題解決を促すラストになっていますが、状況がここまで苛酷だとあんまり希望は持てそうにありません。

*1:作品世界では赤い色は善を象徴することになっているので、このわたしの解釈は誤読かもしれませんが