「トラブルキャット危機一髪」(いずみ玲)

 みさとのお父さんは、「ねこの手商会」というなんでも屋さんを経営しています。メンバーは社長のお父さん、アルバイト学生の小林くん(「小林くん」という響きがものすごくよい)、そしてみさとの三人。お父さんがぐーたらなので、みさとは社長代理として奮闘します。そんなねこの手商会にねこ探しの依頼が来ましたが、どうやらワケありらしく……。
 中編1作と短編4作が入ったほのぼの推理ものです。どの話も事件に関わった人間の家族再生がテーマになっているようです。みさとの家族も、お父さんがグータラ自営業者で、お母さんが警部を務めるバリバリのキャリアウーマン。従来の家族観からははずれていますが、この家族がうまく機能しています。家族というものを深く信頼している、安心して読めるお話です。
 お勧めは第5話の「ドキドキデートにご用心」です。アルバイトの小林くんがおれおれ詐欺に引っかかる話。美人の同級生からデートをするように依頼され舞い上がる小林くん。もちろんそんなうまい話があるわけがなく、ひどい目にあいます。