「地下室の幽霊」(森奈津子)

地下室の幽霊 エンタティーン倶楽部

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 森奈津子作品は例の作風のSFしか読んだことがなかったので、小学生向けを書かせて大丈夫なのかと心配しながら読んでいました。よかった。本当によかった。小学生も安心して読める内容でした。
 容疑者がほとんどいないので犯人探しの楽しみはありませんが、小学生が半世紀前の事件の真相を追っていく過程は楽しめました。呪いのために青かったアジサイが赤くなったというおどろいどろしい怪談が、合理的に説明されるのも快感です。
 筋肉バカの衣緒と理屈バカの一子のコンビも痛々しくてよい感じです。衣緒は自分の立ち位置や周りの状況を的確に分析しているので、決して頭の悪い子ではないと思うのですが。こうやって自分を必要以上に卑下するのは自意識過剰の裏返しなのでしょう。