「魔女ジパングをゆく」(浜田けい子)

「魔女ジパングをゆく」

 ペップ21世紀ライブラリーの一冊。この物語の主人公の魔女、アルテルナテロ・アニーデイリは非常に愉快なダメ人間、不幸キャラです。
 アルテルナテロはパンを焼くことしかできない下っ端魔女(それはすでに魔女ではないと思うのだが)。悪魔親分の指令で颯爽と黄金の国ジパングに旅立ったものの、船が漂流してしまいほとんど身ひとつで漂流してしまいます。そしてやっとの事でたどり着いたジパングには黄金など無く、悪魔親分に指示を請いますが、本国では魔女狩りの嵐が吹き荒れていてそれどころではなく、見捨てられてしまいます。しかたなくアルテルナテロはキヨスのお城に住み着き、ごはんたきをして暮らします。出世を夢にてはるばると多い異国まで来たのに、やってることは変わらない。絶望したアルテルナテロですが、キヨスの城主、若き日のオダ・ノブナガにごはんたきの腕をほめられて気をよくします。こうなったらなんとしてもノブナガを出世させてやろうと、アルテルナテロはごはんたきの地位を利用してひそかにノブナガにドーピングを施します。そのかいあってか信長はどんどん勢力を広げていきます。ところが、ちょっとしたドジでアルテルナテロはかまどを爆発させてしまい、本能寺を炎上させてしまいます。あわれ信長は志半ばに倒れ、アルテルナテロの夢も泡と消えます。自業自得。
 こんな感じで、アルテルナテロは事がうまく運んだと思ったらどん底まで沈むことを繰り返し、それでもこりずに出世を夢見るかわいそうな主人公なのです。
 さて物語のラスト、色々ひどい目にあって、世間ではキリシタン禁令も出てますますジパングは住みにくくなり、そろそろ南蛮へ帰ろうとアルテルナテロはナガサキに向かいます。そこであろうことかまた好みの美少年を見つけて、肩入れしてしまいます。その美少年の名はアマクサ・シロー。結果はご存じの通りです。アルテルナテロの運のなさには笑うしかありません。