「クレイジー・ジャック」(ドナ・ジョー・ナポリ)

 ドナ・ジョーナポリによる「ジャックと豆の木」のパロディ。金原瑞人のあとがき大全よると、ドナ・ジョーナポリの作品は青山出版社での企画がつぶれ、今回ジュリアンで刊行されることになったそうです。既刊はこれと「美女と野獣」のパロディ、「野獣の薔薇園」。さらに4冊が刊行予定だそうで、大変めでたいことです。
 彼女の作品は今のところこれと「逃れの森の魔女」の二作を読んでいます。この二作から判断すると、ナポリは主人公をとことん追いつめていく意地の悪い作家だなあという印象が持たれます。ジャックの一家は父親がギャンブル好きなために財産がどんどんなくなっていき、ついには父親はいなくなってしまいます。そのトラウマでジャックは になると崖にぶつかっていくという奇行をするようになります。幼なじみでおそらく相思相愛の少女フローラも、ジャックがまともにならないので他の男との縁談を進めてしまいます。それでもジャックはどうしようもない衝動に突き動かされて奇行を繰り返します。
 主人公に対する作者の意地悪が見え透いているので手放しでほめることはできませんが、それでも読者の心を突き動かしページをめくらせる力は充分持っています。おなじみの昔話に出てくるアイテムに思わせぶりな象徴性を持たせるテクニックもうまい。でも、もしナポリにこの芸風しかないのであれば、あと1,2作も読めば飽きてしまうでしょう。金原瑞人にはもっと趣向の違う作品も紹介してもらいたいと思います。