「オタカラウォーズ」(はやみねかおる)

 はやみねかおるの初期作品の青い鳥文庫化。ハードカバー版は1993年にでています。内容は小学生三人組がご町内で宇宙人と地球の命運をかけて鬼ごっこをするというもの。宝に地図の暗号を解くというミステリ要素はありますが、あくまでメインはSFです。はやみねかおるのミステリ以外の作品は希少価値があるので、ファンなら一読の価値はあると思います。
 こんなに初期からはやみねかおるのキャラクター造形の基礎ができていたのだということがわかって興味深かったです。たとえば三人組のひとりの千明なんかは人の話をまったく聞かずに強引に我が道を行くタイプのキャラクター。クイーンとかのマイペースさを思わせます。
 このマイペースさははやみねワールドで重要な要素になっているようです。この作品の舞台になっている山之城町でも、怪しい宇宙人が跋扈していて明らかに異常事態が起きているのに、町の人々は強引にそれを無視して日常を維持しています。
 こういう作品もありなのであれば、ぜひはやみねかおるにはもっとミステリ以外の作品も書いてもらいたいです。ラノベとして読ませる力は十分にあるのだから、ミステリを絡めないでただ単に映画を撮るだけの話とか、文芸部の話とかを書けば面白くなると思うんですけど。