「オペレーション太陽」(小池潤)

オペレーション太陽(ソル) (ファンタジーの冒険)

オペレーション太陽(ソル) (ファンタジーの冒険)

 帰国子女で日本の学校になじめないでいる少年、矢羽々時夫が、最新鋭の飛行船「ソル」に紛れ込んでしまいます。見本市船を名乗る「ソル」の目的は、今の世界に足りないものを宣伝すること。飛行船の中に有機農法の農場があったり、いろいろ地球に優しいことをしています。しかしそれは表の顔。実はソルには世界中の核兵器を無力化し、兵士を洗脳して戦う意志を奪う超兵器が搭載されていました。その秘密が船内に侵入していたスパイによってかぎつけられ、ソルはテロリストとして排撃されることになります。そういうわけで、エコロジーユートピア探訪小説に思えた物語は、途中から戦艦ものに変容します。
 こういう作品なので、露骨なエコメッセージや反戦メッセージがウザい人には徹底して受け付けないでしょう。しかし娯楽SFとしてはなかなかしっかりしています。戦艦による戦闘、衛星軌道上からの攻撃など、燃え魂をくすぐる展開が見られます。こういった要素はSF小説よりも、むしろ漫画やアニメの影響下にあるように思えます。クラシックをバックに精神汚染攻撃なんていうネタがエヴァンゲリオンの2年前にすでに児童向けメディアでつかわれていたというのはちょっとおもしろいかも。この「オペレーション太陽」をふくめ、理論社の叢書「ファンタジーの冒険」は、現在のラノベと融合した児童文学の興盛の先駆けに位置づけられると思います。