「ロケットにのって」(泉啓子)

ロケットにのって (風の文学館2)

ロケットにのって (風の文学館2)

 ツバサ、レン、ユキノはとても仲のよい幼なじみ三人組でした。ところが4年生の時、三人組のひとりレンが父親の仕事の都合で渡米してしまいます。物語のはじまりは卒業まで間のない6年生の三学期。レンが予告もなくアメリカから帰ってきました。レンは現在人に貸している自宅に、転校する時に埋めた宝物を掘り出すために忍び込もうと言い出します。レンの家にはツバサやユキノと同じクラスで不登校のネギマがすんでいました。はてさて騒がしい闖入者の出現でどうなることかというお話。
 レンとツバサのはじけたキャラで物語のカタルシスを保証しつつ、それぞれの事情を綿密に描くことでリアリティも確保している。学校という狭い世界でどうしようもなく追いつめられていく子供達を丁寧に描いています。不登校のネギマが学校に微妙に参加しつつも結局最後まで不登校のままというのがいいです。現代の子供をリアルに捉えているという点では、泉啓子はもっと評価されていい作家だと思います。
 この作品で注目すべきことは、ユキノの絵に描いたような委員長っぷりです。おばかな男子をダミガミ叱るのが生き甲斐の小学6年生、すごい。でもこのユキノが中学生になってあんなに苦労することになるとは……。「青空のポケット」に続く。