「ファンタジーと言葉」(アーシュラ・K. ル=グウィン )

ファンタジーと言葉

ファンタジーと言葉

 ル=グウィンのエッセイ集。痛快の一言です。
 冒頭に収められている「自己紹介」と題した文章で「わたしは男である」ただし「自分が二級の男、あるいは男もどき、うそっこの男かもしれないってことは認めるにまったくやぶさかではありません」といってのける諧謔精神。ジェンダーを正当化する似非科学言説を痛烈に批判した「遺伝子決定論について」。アメリカ人の持つ五つの勘違い*1を看破してみせた「自問されることのない思いこみ」。ル=グウィンはユーモア精神に満ちた非常にまっとうなフェミニストです。彼女ももうだいぶお年を召しているはずですが、まだまだ頑張って発言してもらいたいです。
 また、図書館の魅力について語っている「わたしの愛した図書館」という文章もすばらしかった。が図書館の本質を過不足なく表現している冒頭の文章が秀逸です。

図書館は共同体にとって、焦点となる場所、聖なる場所です。なぜ聖なる場所かといえば、それは図書館がだれでも入れる、あらゆる人に開かれている場所だからです。

*1:①わたしたちはみな男である②わたしたちはみな白人である③わたしたちはみなホモではないし、レズでもない④わたしたちはみなキリスト教徒である⑤わたしたちはみな若い