「ぼくの・稲荷山戦記」(たつみや章)

ぼくの・稲荷山戦記

ぼくの・稲荷山戦記

ぼくの・稲荷山戦記 (講談社文庫)

ぼくの・稲荷山戦記 (講談社文庫)

 今度は「稲荷山戦記」ですか。ここんとこほとんど毎月のように講談社児童文学新人賞の受賞作が講談社文庫に落ちているような気がします。解説は師匠の中島梓。一般向け文庫ということで、小説道場に投稿された原型バーションが拝めるのではないかとよこしまな期待をしてしまいましたが、さすがにそれはありませんでした。
 中島梓も自分が師匠であることは明かしているものの、核心には触れていません。少しは裏話的なことも聞きたかったのですが。
 そのかわり中島梓が披露していたのは、根拠のない素朴なナショナリズムでした。「健全な日本人であったら誰しも」持っていた「アニミズムを見失った」ために今の世相は荒廃しているのだそうです。中島梓パオロ・マッツァリーノ氏いうところのスーペーさんの仲間だったのか。
 以前からたつみや作品にはこういう読みを許してしまう危うさがあるのではないかと疑いを持っていましたが、この中島梓の解説を見て残念ながら疑いが強化されてしまいました。