「クレヨン王国の十二か月」(福永令三)

クレヨン王国の十二か月 (講談社文庫)

クレヨン王国の十二か月 (講談社文庫)

 次はどの講談社児童文学新人賞受賞作が講談社文庫に落ちるのだろうと思っていたら、なんと1964年の受賞作とは。しかも編集の指示で削った原稿用紙100枚分を加えた初稿バージョンとして刊行されました。「その後」で絶望してもうクレヨン王国の新作が出ても二度と読むまいと決めていたのに、こういうかたちで新しい本が出るとは、講談社は商売上手です。
 クレヨン王国シリーズの第一作。シルバー王妃の12の悪い癖に我慢がならなくなったゴールデン王はクレヨン王国から家出してしまいます。王さまを追ってシルバー王妃とユカは12の月をめぐる旅を繰り広げることになります。
 旅を通してシルバー王妃は欠点を克服していく物語になっているので、シリーズの中でも説教臭さは高い部類に入ります。マリ姉さん(シルバー王妃)は欠点だらけだからこそ魅力的な女性なんですけどね。それがわからない男など捨ててしまえばいいのです。だからこの作品は単独で見ればまったく評価できません。しかしこの点はその後のシルバー王妃の旅で修正されていきます。