- 作者: 高橋秀雄,宮本忠夫
- 出版社/メーカー: 小峰書店
- 発売日: 2006/09
- メディア: 単行本
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この味も素っ気もないシンプルすぎるタイトルでこの設定とくれば、どうせ最後は良夫が悟一やんを父ちゃんと呼ぶ場面でしめるんだろうと読者には容易に想像できます。そこをあえて押し通すというのは、作品に対してよほどの自信がないとできないはずです。で、それが成功しているかというと、憎たらしいことに大成功しています。この手の作品に感動させられるのは本当に悔しいのですが、傑作なんだからしかたがありません。
ごくごく普通の貧しい人々に寄り添う作者の姿勢が素晴らしいです。なかでも貧しい中で気高く生きる悟一やんには魅了されてしまいます。
こういうほめ方をするとノスタルジーに訴える安っぽい娯楽小説のように思われてしまうでしょうが、この作品は違います。善意を描く一方で、そこらの普通の人が自分より弱いものに残酷な悪意を向ける様もきっちり描いており、作品の奥行きは非常に広いです。