「電報配達人がやってくる」(谷山浩子)

電報配達人がやってくる

電報配達人がやってくる

ヤクソク6ガツ20カゴゼン1ジワスレズニコラレタシヘンナユウエンチニテマツイチコ

 宮迫わいちは深夜電報配達人にたたき起こされ、こんなへんな電報を受け取ります。名前が自分とアナグラムの宮沢いちこによびだされる6月20日は永遠にループし、わいちはへんな遊園地、へんな水族館、へんな香港でいちこの捜索を続けることになります。
 いきなりネタをバラしてしまうと、この話は男と女が永久にすれ違ったまま終わってしまう前代未聞の恋愛小説です。見つけたと思うといちこは別のものに変容してしまうので、いつまでたってもふたりの出会いは実現しません。ある意味純然たる恋愛のあり方を描いているのかもしれません。
 わいちが迷い込む変な世界の数々も視覚的イメージが浮かんできておもしろいです。やはり谷山浩子は天才です。