「一億百万光年先に住むウサギ」(那須田淳)

一億百万光年先に住むウサギ

一億百万光年先に住むウサギ

 信頼と実績の「理論社のYA!シリーズ」最新作です。ですが、これは、YAとしてはいいと思うんですが、年寄りにはちょっとつらいです。
 退職した元大学教授の下で家政夫のバイトをしている中三の少年翔太が主人公。ストーリーよりも雰囲気を楽しむお話ですが、おおまかな柱となるストーリーは前半は留学生のマリーが盗難の容疑をかけられそれを晴らすお話で、後半は自分の出生の秘密を求めて同級生のケイが家出をするお話。物語が進むに従って翔太の同級生のケイとマリーとその家族のルーツが徐々に明かされていきます。
 なにがつらいって、主人公の周りの大人がみんな自由業なのが地に足がついていなくて違和感を持ってしまいます。翔太の父はトランペット奏者で母は喫茶店をやっている。ケイの父は便利屋で母は戦場を駆けるジャーナリスト。普通の勤め人が1人もいない。そういう設定のファンタジーとして読むしかないのですが、こういった人々がすかした会話をするのを魅力的と思えるかどうかでこの作品を楽しめるかどうかが決まるでしょう。
 この作品の本質は萌え小説です。主人公が意味もなくもてまくります。女の子に「さっき、ちょっと良さそうなところ(ラ○ホ)を見つけたので、いってみない?」と言わせるまでの強引な展開には失笑してしまいました。男子中学生の妄想の世界のお話です。