「かかしと召し使い」(フィリップ・プルマン)

かかしと召し使い

かかしと召し使い

 雷に打たれて「体じゅうの分子や原子や素粒子が活発に働きだした」かかしが命を持ってしまいます。目覚めたかかしはたまたま出会った戦災孤児の少年ジャックに声をかけ、旅に誘います。ジャックはお腹をすかす以外にやることがなかったのでかかしの誘いを受け彼の召し使いになりますが、それが苦労のはじまりでした。なにぶんかかしなので頭がすかすか。ご主人は行く先々で突飛な言動をして、ジャックはフォローに苦労することになります。
 みどころはかかしのボケと奇想天外な事件の数々です。かかしは山賊退治をしたかと思えば、劇団にはいって小道具の役をもらうものの、勝手に動き回って舞台をぶちこわしてみたり、はたまたほうきに恋をして暴走してみたり。軍隊に志願すると、あまりに成績が悪かったので将校に任命されてしまう(このあたりのシニカルさはやはりプルマン)。終盤では意外な凶器で殺されかかったりします。しかもせっかくの意外な凶器を章タイトルでネタばらししているのは無欲でよい感じです。
 「ライラの冒険」ほどの重量感はありませんが、軽く読み飛ばすには充分面白い本です。