<司書07年問題>今後5年で半数定年 都立図書館ピンチに

<司書07年問題>今後5年で半数定年 都立図書館ピンチに

 07年度以降に「団塊の世代」の司書が大量に退職する極端な「2007年問題」に、東京都立図書館が直面している。全司書数136人の半数に当たる68人が55〜60歳で、今後5年間で定年を迎える。一方で20代の司書はゼロ。ベテラン司書の持つノウハウが存亡の危機にひんしている。

 都立図書館は、1908年開館の日比谷(千代田区)、中央(港区)、多摩(立川市)の3館。05年4月現在、合計の蔵書数は232万7000冊で都道府県立図書館としては全国最多だ。

 都教育庁社会教育課によると、司書の平均年齢は51.2歳で、7割以上の97人が50〜60代。30代が19人で14%、40代が20人で15%と極端な年齢構成になっている。73年の中央図書館開館に合わせ、就職時期の重なった団塊世代を大量に採用したことからこの世代に司書が集中した。さらに効率化を図るため、図書資料の貸し出しや返却などについて民間委託を進め、02年度以降は司書の新規採用を凍結してきた。

 同庁は「現行のサービス水準は守りたい」としており、定年後も最長5年まで勤められる再雇用(嘱託の特別職)や再任用(一般職)の制度を活用し、当面は団塊世代の司書をつなぎとめる方針だ。しかし、これらの司書が引退するのは時間の問題で、同庁は「いずれは新規採用を再開しなければならないだろう」と言う。

 中央図書館では、各フロアで特定分野に精通した司書がいる従来の配置を見直し、司書を1カ所に集めて来館者に対応する「ワンストップサービス」の導入などの改革案を示す。このため司書は、深い専門性より、「広く浅い」知識を持って全般的な分野をこなすことを求められる。30年余のキャリアがある同図書館司書の竹内真弓さん(58)は「改革で資料の把握がしきれなくなり、個々の司書の力量が落ちる恐れがある。計画的な司書の採用を怠ったツケが一気に回ってきた」と話す。

 行財政改革の影響で司書や学芸員などの専門職が減らされるのは全国的な傾向という。日本図書館協会常世田(とこよだ)良理事は「一人前の司書になるために10年はかかるのに、若手の司書がほとんど育っていない。図書館はビジネス、医療、法律など身近な地域の課題に役立つ存在。行政は人事態勢の拡充に努めるべきだ」と指摘している。【木村健二】(毎日新聞より)

 毎日新聞のサイトには都立図書館の司書の年齢構成のグラフが載っています。笑っちゃいけないけどこう視覚的に見せられると笑うしかありません。20代の司書がひとりもいないとは。
 都教育庁の「いずれは新規採用を再開しなければならないだろう」という言いぐさにはあきれはててしまいます。若い司書を可及的速やかに新規採用して育成することがこの問題の唯一の解決策であることは明らかです。なのに何でこんなに嫌そうに言うのか。人件費の削減よりも優先されるべきことはあるはずです。この事態は文化の破壊に他なりません。