「シェーラひめのぼうけん うしなわれた秘宝」(村山早紀)

 「シェーラひめのぼうけん」の第二巻。へびのばけものが守っているという伝説の都の廃墟に一行が青のかぎを探しに行くお話です。
 酒によって無辜の市民相手に剣を振り回すひめさまのあばれっぷりが笑えます。ハイルに嫉妬するファリードもかわいいし、早くもへたれ化した悪役のサウードもおもしろい。やはりキャラの立て方がうまいです。この巻で初登場のハッサンとアリの二人組も愉快です。もと盗賊ながら今は砂漠一の科学者を目指し人力飛行機の開発にいそしむふたり。この間抜けな第三勢力がどう物語に絡んでいくのか期待を持たせてくれます。
 作品のテーマは長崎夏海の解説にあるように「うらぎり」「友情」「未来」なのでしょう。村山早紀の思想は非常に優等生的なのですが、優等生にありがちのいやみさがないので好感が持てます。

とうぞくだったという過去は本当のことで、いまさらけすことはできません。人の手でかえることができるのは未来だけです。だからハッサンはえらい人になろうと思いました。だれからも尊敬されるようなえらい人にです。