「そっくりそらに」(西岡千晶)

そっくりそらに (cub label)

そっくりそらに (cub label)

わくわくどきどきバラランサ
おったまげるのが だいのこうぶつ

 西岡千晶初のソロ絵本です。内容は西岡版の「屋根裏の散歩者」といったところでしょうか。
 集合住宅の屋根裏部屋にすんでいるバラランサは「みずやりがかり」です。つたをつたってあちこちの植物に水をやります。彼の趣味は「みずやりがかり」の職権を乱用してのぞきをすることでした。彼が一番興味を持っているのはシシーとスースー。このふたりは外見も行動も全くそっくりで、違いは目の色と飼っている「ちび」の数くらいでした。なのにお互いの存在を知りません。バラランサはふたりの部屋を交互に観察します。
 ある日スースーは豚をゆでるために棚の奥から大鍋を取り出しました。ところがこの鍋が底なしで、「ちび」がひとり落っこちてしまいました。興味津々のバラランサはシシーの部屋はどうなっているかさっそく偵察に出かけます。
 リズム感のある語りは絵本の語りとして洗練されています。シャープな線と空白が生かされたイラストも素晴らしい。そしてなにより、沈黙の中イラストのみで説明されるラスト3ページの怖さといったら!
 この先も子供の心にトラウマを残す作品をたくさん生み出してもらいたいものです。