「シェーラひめのぼうけん 海賊船シンドバッド」(村山早紀)

 「シェーラひめのぼうけん」の第四巻。今回シェーラは船に乗りたいとわがままを言いやがります。わけを聞いてみると彼女は、尊敬するお父さまが少年時代船旅をして海賊と渡り合った武勇伝を語ります。お父さまは仲間を守るために、騙されても騙されても海賊の無理難題に従い続けたのだそうです。結局見るに見かねた仲間たちが立ち上がり、偶然そのタイミングで近くの国の軍艦が通りかかったのでお父さまは危機を乗り越えました。ひめさま、お父上は賢かったのではなくて、天然ボケだっただけでは?
 シェーラの話を契機に、ファリードやハイルも自分の親のことを思い出します。親に愛された子も親に捨てられた子も親を捨てた子も、みんなみんな幸せになってもらいたいものです。
 さて、船に乗り込んだご一行は案の定海賊に襲われ、正義の海賊シンドバッドに助けられます。そしてシンドバッドを助けるために魔神の呪いを受けてしまった彼の父親をめぐる冒険に巻き込まれることになります。いや、ここまで誰も幸せになれない状況を設定して、安易な自己犠牲に逃げなかったのはすごいと思います。シリーズでこれまで見られなかったシリアスな展開で読み応えがありました。
 解説は森絵都。彼女はハッサン萌えだそうです。しかしサウードに対しては「人にはそれぞれ好みというものがあるので、サウードファンのあなたも、むねをはって応援しましょう。」と冷淡です。サウードはこの巻で改心しそうなそぶりを見せているから、ここらが株の買い時だと思うんですけど。