「世界一、きみが好き 初恋コレクション６」（岡信子・木暮正夫・編）

世界一、きみが好き (初恋コレクション)

　初恋コレクションの第二期がスタートしました。
　今回の作家陣の目玉はなんといっても次良丸忍です。非モテ男子の悲哀を描かせたら右に出る者はいない彼なので、ここではアウェーでの戦いを強いられることになります。タイトルは「恋のタイムセール」。安売り店に突撃するのが趣味のふたりの物語です。この生活感がたまりません。でも「銀色の日々」系の作品を期待していたので、ちょっと期待はずれではありました。
　面白かったのは牧野節子の「着ぐるみスター☆」でした。女の子が幼児にボコられている着ぐるみうさぎのおにいさんを助けるという、笑える出会いから物語ははじまります。このおにいさんは着ぐるみのバイトで食いつなぎながら役者を目指している、絵に描いたようなかっこわるい夢追い人でした。しかしながら彼は、かっこわるくても優しさを表現できる文句なしにいい男でした。結局彼は夢やぶれて田舎に帰って梨をつくることになります。このあたりのベタさもすばらしい。ベタながら、風のように去っていった好青年の影響を受けて女の子も前向きな気持ちをもらって成長する、さわやかなお話でした。
　泣けたのは服部千春の「恋せよおとめ」です。梨紗のひいおばあちゃんの亡霊が若かりし頃の自画像に乗り移ってしまい、梨紗は霊に頼まれて自画像をひいおばあちゃんの初恋の人に届けに行くことになります。泣けます。すっかり忘れ去られてしまったひいおじいちゃんのことを考えると泣けてきます。