「積みすぎた箱舟」(ジェラルド・ダレル)

積みすぎた箱舟 (福音館文庫 ノンフィクション)

積みすぎた箱舟 (福音館文庫 ノンフィクション)

 また福音館文庫がいい本を復刊してくれました。ダレルの処女作が今回は羽田節子による新訳でよみがえりました。この本も講談社学術文庫版は絶版で、古本だと定価の倍近い値が付いていたりします。手に入りやすくなって喜ばしい限りです。
 1947年、22才の青年ダレルは動物園のための動物を採集するためにカメルーンに旅立ちました。その採集旅行の記録が本書です。時代が時代なので植民地主義的ないやらしさは鼻につきますが、そこに目をつぶれば彼の動物採集にかける純粋な情熱が伝ってくるさわやかな冒険記になっています。
 アフリカの風景、気候、人々、そして多彩な生物たち。細部の描写が輝いています。文章の技巧の問題ではなく、こういう描写は著者が冒険を心から楽しんでいるから実現できたのだと思います。