「ピーター・パン イン スカーレット」(ジェラルディン・マコックラン)

ピーター・パン イン スカーレット

ピーター・パン イン スカーレット

 今年はマコックラン作品が三冊も出ました。よろこばしいかぎりです。
 ウェンディ達が大人になった1920年代、かつてネヴァーランドで暮らしていた「もと子ども」たちは夜な夜なネヴァーランドを舞台とした悪夢に悩まされていました。その原因を探るためにウェンディと「もと子ども」たちは再びネヴァーランドに赴くことを決意します。
 たどり着いた島は荒れ果てていて、すっかり様変わりしていました。頼みのピーター・パンも血のように赤い服を着ていて以前と微妙に雰囲気が違います。
 ところがところが、島に着いた一行は目的を忘れてしまい、前と同じようにピーター・パンとの冒険に夢中になってしまいます。仕方ありません、だってネヴァーランドなんだから。子ども達は救いようもなく子どもで、ウェンディはウェンディで母親役をきっちりこなします。、ネヴァーランドの楽しさが忠実に再現されていて、マコックランがすっかりこの世界を自分の血肉にしていることがうかがえます。
 ピーター・パンに対峙する存在といえばもちろんフック船長です。マコックランは「ピーター・パン」がフックの存在によって支えられていることも見逃していません。ピーター・パンとフックの物語に片を付けさらにその先を目指しています。姿を見せないティンカー・ベル、ネヴァーランドを冒していたものの正体、大人と子供の断絶と絆、マコックランの用意した仕掛けが収束する終盤の展開は見事としかいいようがありません。