①ケイゾウさんは四月がきらいです。(市川宣子)
老いぼれニワトリと幼稚園児の心あたたまらない交流の物語。ロングセラーになることが約束された作品(のはず)。福音館には社運をかけてでも売ってもらいたいです。
③教室の祭り(草野たき)
教室内文化の異様さを冷徹に描いたリアリズム作品です。
④森の大あくま(二宮由紀子)
はてしなく頭が悪くはてしなく知的なナンセンス童話。今年一番笑わせてもらった本です。
その他
今年はファンタジー系で底力のありそうな新人がたくさん登場しました。講談社児童文学新人賞の立石彰と菅野雪虫、児童文学ファンタジー大賞の古市卓也と藤江じゅん、ジュニア冒険小説大賞の廣嶋玲子。このなかで現時点でもっとも手堅い作品を書いてくれそうなのは「水妖の森」の廣嶋玲子ですが、ジュニア冒険小説大賞に新人を育てるつもりが全くなさそうなのが気がかりです。ついでに、「それからのピノッキオ」の吉志海生も言語化しにくいおもしろさを持っていて気になります。
ファンタジー以外の新人では、「まんまるきつね」で特徴のあるメランコリックな世界を紡いだ川島えつこに注目したいです。
復刊本も豊作でした。4月に「少年八犬伝」のリメイク版が出て、これ以上のは出ないだろうと思ってましたが、その後すぐ国土社の「創作子どもSF全集」全20巻が復刊。YAの範疇にいれていいかは微妙なところですが、個人的にはピュアフル文庫での「氷の海のガレオン」の復刊が一番うれしかったです。