2006年ベスト児童文学 国内編

竜神七子の冒険 (文学の散歩道)
森の大あくま
教室の祭り (わくわく読み物コレクション)
うしろの正面 (わくわく読み物コレクション)
ケイゾウさんは四月がきらいです。 (福音館創作童話シリーズ)

①ケイゾウさんは四月がきらいです。(市川宣子)

老いぼれニワトリと幼稚園児の心あたたまらない交流の物語。ロングセラーになることが約束された作品(のはず)。福音館には社運をかけてでも売ってもらいたいです。

②うしろの正面(小森香折

眩暈のするような幻想的な別世界を構築し、少年の通過儀礼をダイナミックに描いた力作です。

③教室の祭り(草野たき

教室内文化の異様さを冷徹に描いたリアリズム作品です。

④森の大あくま(二宮由紀子)

はてしなく頭が悪くはてしなく知的なナンセンス童話。今年一番笑わせてもらった本です。

竜神七子の冒険(越水利江子

貧乏なんてなんのそのな、たくましい女の子の物語。庶民の生活を骨太に描きながら、時折息をのむような幻想的な風景を見せてくれるところに魅力があります。

その他

 今年はファンタジー系で底力のありそうな新人がたくさん登場しました。講談社児童文学新人賞の立石彰と菅野雪虫、児童文学ファンタジー大賞の古市卓也と藤江じゅん、ジュニア冒険小説大賞の廣嶋玲子。このなかで現時点でもっとも手堅い作品を書いてくれそうなのは「水妖の森」の廣嶋玲子ですが、ジュニア冒険小説大賞に新人を育てるつもりが全くなさそうなのが気がかりです。ついでに、「それからのピノッキオ」の吉志海生も言語化しにくいおもしろさを持っていて気になります。
 ファンタジー以外の新人では、「まんまるきつね」で特徴のあるメランコリックな世界を紡いだ川島えつこに注目したいです。
 復刊本も豊作でした。4月に「少年八犬伝」のリメイク版が出て、これ以上のは出ないだろうと思ってましたが、その後すぐ国土社の「創作子どもSF全集」全20巻が復刊。YAの範疇にいれていいかは微妙なところですが、個人的にはピュアフル文庫での「氷の海のガレオン」の復刊が一番うれしかったです。