「マッチ売りの少女」(末吉暁子/文 中島潔/絵)

 昨年も同じようなことを書いていたような気がしますが、やはり大晦日といえば「マッチ売りの少女」です。
 今回取り上げるのは小学館「世界名作おはなし絵本」第1回配本分の中の一冊です。画家は中島潔。1000円で中島潔の画集が買えると思えば安いものでしょう。彼は泥臭い中にも気品がある少女を描くのがうまくて、「マッチ売りの少女」にぴったりです。少女が日本人にしか見えないのが問題ですが、気にしなければどうということはありません。
 そびえ立つ建物が少女の存在の小ささを強調し、孤独感をあおっています。無彩色の風景の中で少女の着物だけがあざやかな赤なのが寒々しいです。
 それにひきかえマッチが見せる幻想の世界、そして少女の死に顔の美しさといったら。
 まったくたちの悪い童話です。アンデルセンの偉大さをあらためて思い知らされました。