「恐怖のおくりもの① 人面ガエル」(創作集団プロミネンス 編)

人面ガエル (恐怖のおくりもの)

人面ガエル (恐怖のおくりもの)

 本田昌子の作品が読みたくてこんな本まで探してきました。怪談アンソロジーは意外な作家が書いていたりするので、たまに読むとおもしろいです。が、作家目的で探すには数が多すぎるのでちょっと扱いに困ってしまいます。この本にも竹下龍之介なんていう懐かしい名前があって驚かされました。
 本田昌子の作品「森にふる雨」は、森の中で会うはずのない人に会うお話です。タイムスリップものとしてはあまりにありふれた展開の話なのですが、そこに物足りなさを感じさせないのが本田昌子のすごさです。森の描写の美しさと語りの叙情性で一級の短編に仕上げています。
 「森にふる雨」はアンソロジーのラストに収められており、その前の作品は横田順彌の「きみょうなまちがい電話」というやはりタイムスリップものSFでした。これが電話を利用したひねりのきいたタイムスリップSFだったのですが、「森にふる雨」と違って後味の悪さがいい作品でした。主人公には落ち度はないのに、自業自得のように感じさせてしまういじわるな展開が絶妙です。この二つを並べてアンソロジーのフィナーレとした編者は粋ですな。