「ボーイズ・イン・ブラック①」(後藤みわこ)

ボーイズ・イン・ブラック 1(YA! ENTERTAINMENT)

ボーイズ・イン・ブラック 1(YA! ENTERTAINMENT)

 アイドルの如月幸長にそっくりな美少年松永タケルが主人公。タケルの通っている中学校に美少年雨龍しのぶが転校してきてから、タケルのまわりで不可解な出来事が起こるようになりました。タケルがひそかに「ぼむぼむ」と綽名を付けていた美人養護教諭江本イネ子先生が、いじわるなおばさん先生にかわっていたのです。ところがタケル以外の生徒はそのことを疑問に思わず、江本先生は以前からおばさん先生だったと思いこんでいます。その後タケルとぼむぼむは意外なかたちで再会しました。タケルのおじの梅ちゃんの婚約者として現れたのです。彼女は「まりあ」と名乗っていますが、間違いなくタケルのぼむぼむでした。しかも、転校生の雨龍しのぶが彼女の弟としてタケルに接近してきました。少年ばかりを狙う変質者が町を徘徊する事件もからみつつ、転校生の正体が明らかになってきます。
 タイトルはもちろん「メン・イン・ブラック」からとっており、転校生の正体はおわかりのとおりです。地球の生命の起源に面白い設定をつけているなどSF的な伏線もあり、今後どう生かされていくのか興味が持たれます。
 後藤みわこ独特の言語感覚も面白いです。変質者が「怪人ダキシメン」。胸がでかいから「ぼむぼむ」。さすが勃起を「チョコ」と表現してみせた後藤みわこだけのことはあります。それにしてもなんで彼女はこんなにも男子のエロ妄想に理解を示すのか不思議です。主人公はほとんどえっちいことを考えてるだけのボンクラだし。もちろんBLもあり、作品世界はまっピンクに染まっています。 
 しかし後藤みわこは児童文学界では稀少価値を持つSFを書ける作家だけに、BLということで読者の層を狭めているのはもったいないと感じてしまいます。それとも、BLという付加価値をつけないと本が出せないほどにSF児童文学は売れなくなっているのでしょうか。なんにしても後藤みわこはSF児童文学界の支柱になれる可能性を持った作家ですから、この調子でがんばってもらいたいです。