「海駆ける騎士の伝説」(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)

海駆ける騎士の伝説

海駆ける騎士の伝説

 19世紀の英国、その姿を見たものは流砂にのまれて死んでしまうという伝説の「運命の騎士」を見てしまった姉弟が、騎士に導かれて海の向こうの別世界で冒険を繰り広げるお話です。
 ジョーンズの初期作品です。なので彼女の最大の魅力である張りめぐらせた伏線を一気に収束させる至芸はみられません。荻原規子いうところの「DWJのちゃぶ台返し」がないので、すれっからしのDWJファンには物足りないかもしれません。
 しかしながら登場人物はアクが強く、その点ではDWJらしさが感じられます。特に女性陣が個性的です。しょっちゅう弟のロバートをいじめている隣人の少女スザンナもひねくれていていいし、はねっかえりの姉セシリアもいかにもジョーンズ作品らしい自我の強い女性で好感が持てます。いつも父親と衝突してばかりいたセシリアが当然のようにある重大な選択をするラストがさわやかです。