「ライバルは幽霊? 初恋コレクション7」(岡信子・木暮正夫・編)

ライバルは幽霊? (初恋コレクション)

ライバルは幽霊? (初恋コレクション)

 初恋コレクション第7巻。小森香折による表題作がものすごく悪趣味でよかったです。
 未央は気になる男子小岩井裕太くんにストーカーがついていることに気付きます。いい大人なのに髪を二つに分けて黄色いワンピースを着ている変なおばさん(あくまで小学生から見ておばさんですが)です。ところがその黄色さんは未央以外の人には姿が見えていないようで、すわ幽霊か生き霊かと未央はおびえます。
 さて、黄色さんの正体も意外で面白いのですが、最後の黄色さんの独白がなんとも意味ありげで怖いです。なにしろまだ恋が始まっていないにもかかわらず、その恋が破綻する未来が確定されてしまうのですから。以下盛大にネタをバラします。



 ホラーだと思わせておいて本当はSFだったとは。黄色さんの正体は未来人で、未来の小岩井くんに片思いをしていました。その思いがこうじて、彼女は霊体となって少年時代の小岩井くんを見に来たのだといいます。彼女が最後に漏らした独り言はこうでした。

いつも黄色い服なのは、裕太さんが黄色いフリージアが一番好きだっていったからよ。裕太さんが初恋の人にあげた花。わたしが霊になって時をこえたのは、子どもだった裕太さんはもちろんだけど、彼の初恋の人、吉永未央ちゃんを一度見てみたかったから。ばかみたい。わたしったら、ふたりのキューピッド役をしちゃったんだわ。

 文脈から判断すると裕太くんの初恋は過去のものだと考えるのが妥当でしょう。いきなり始まってもいない恋に終止符を打つのだから残酷です。さらに深読みすると、過去にこないと彼の初恋の人が見られないということは、未来の未央はどうなっているのでしょうか。怖いです。