序盤は定番の探偵小説でご機嫌うかがいです。何十年も読み継がれている名作を語るときには落とし穴があって、どの
バージョンで読んだかによって世代の断絶が明らかになってしまうおそれが出てきます。その代表格が
江戸川乱歩になるでしょう。この本で紹介されている
講談社の全集はわたしも初めて知りました。
生頼範義の函絵は確かに怖い。もし小学校時代に初めて出会ったのがこれだったら、わたしは怖くて手に取れなかったかもしれません。
江戸川乱歩の挿絵関係では絵本作家
片山健の「鏡地獄」にも触れられています。「鏡地獄」は乱歩作品の中でも特に純粋な狂気を描いている作品ですが、
片山健がその狂気に見事にシンクロしていて直視できないような迫力がありました。
さて、本書では幅広いジャンルの本が取り上げられていますが、やはり非売品の本を紹介しているのは北原尚彦ならではです。企業やお役所が発行している本もたくさん紹介されていました。書店に流通していなくて手に入りにくい本なだけに、よけい興味がわいてしまいます。