「ぼくってヒーロー?」(立石彰)

講談社・文学の扉 ぼくってヒーロー?

講談社・文学の扉 ぼくってヒーロー?

 昨年講談社児童文学新人賞受賞作でデビューした立石彰の第二作です。
 未来人から変身ベルトを渡され、むりやりヒーローに仕立てられてしまった真一。しかしコスチュームはかっこわるい上に、お目付役がついているので変身したいときに変身できないと、全然いいことがありません。はたして真一はヒーローとして立派に活躍することができるのか?
 というわけで、変身ヒーローものなのに制約が多いためまったく願望充足ストーリーにならないいじわるな作品になっています。真一にとって本当に深刻な日常トラブルに立ち向かうときには超能力に頼れません。大事件を超能力で解決する華々しさと、日常トラブルを地道に解決するかっこわるさが対比されているのが面白いです。その上で強くなることを絶対の価値とせず、弱いまま生きていく道を示してみせたのは意義が大きいと思います。
 ただし、本当はみんないい人であることを前提として問題が解決されているため、変身して戦っているときより変身しないで戦っているときの方がファンタジーになっているのが気になります。こういうひねくれた見方をするとこの作品は残酷です。