「ラブ偏差値」①②(斉藤栄美)

ラブ偏差値 もしかして初恋!? (フォア文庫)

ラブ偏差値 もしかして初恋!? (フォア文庫)

 私立中の文化祭を見て突如受験に目覚めた小五のれんげは、実学舎というアットホームな感じの塾に通うことになります。その塾には秘密がありました。裏庭にある妖怪ポストに恋愛体験談のレポートを出すと、「ラブ偏差値」を判定してくれるのだそうです。れんげは他の塾に通っている友達の塾友達と仲良くなりますが、すぐに破局を迎えてしまい、はじめてポストにレポートを提出することになります。
 あんまり勉強に縁のなかった子が塾通いをし、ついでに夜遊びを覚えたりして未知の世界に飛び込んでいく過程は楽しげでよかったです。恋愛のパートもいかにもありそうな話で共感を得られると思います。どう見てもいい雰囲気になっているのに緊張感に耐えられなくなって自爆してしまう。痛々しくて見ていられません。
 ただ、お話は面白いのですが、主題の「ラブ偏差値」って概念はどうなんでしょう。受験の偏差値は自分の位置を知り対策を立てるために有用です。しかし恋愛に関して偏差値を上げていってステップアップしていくという発想がよくわかりません。とりあえずラブ偏差値の妥当性信頼性が何を担保に保証されているのかという問題は置いておくとしても。なにを目的にこの偏差値をあげるんでしょうか。ちょっとついていけないものを感じてしまいました。
ラブ偏差値 初デートはちょいビター!? (フォア文庫)

ラブ偏差値 初デートはちょいビター!? (フォア文庫)

 そして第二巻ですが、これはいい意味でひどい作品でした。内容をごくごく簡単に紹介しますと、どうでもいい男子から好かれたときはきっぱりふってあげましょうというお話です。実用的にもほどがあります。ふられた男子がいい子なので釈然としないものは残りますが、そこをあえて完膚無きまでにふってみせたのはなかなかの冒険だったのではないでしょうか。
 ふった結果れんげのラブ偏差値は一気に跳ね上がりました。ラブ偏差値がなにを目指すものなのか、もう少しつきあって見極めたいと思います。