「タランの白鳥」(神沢利子)

タランの白鳥 (福音館文庫 物語)

タランの白鳥 (福音館文庫 物語)

 タランと呼ばれる湖を持つオホーツク海の島が舞台。海馬神(とどがみ)の怒りをかった先祖を持つ青年モトコルと、彼を支える白鳥の化身である妻の物語です。
 捕食のために動物を殺す意味が現代とは違う時代の物語なのでしょう。人間と動物の戦いが神話のような荒々しさを持って描かれています。主人公のモトコルはまるで動物を殺す罪を一身に引き受けているかのように、儀式的な動物との戦いに赴く運命を背負わされます。壮絶な戦いの描写を通して、生きることの根源的な意味を問いかけられているような気がします。