「ライラ」からの手紙―フィリップ・プルマン (名作を生んだ作家の伝記シリーズ)
- 作者: マーガレットスピーカー・ユアン,Margaret Speaker‐Yuan,中村佐千江
- 出版社/メーカー: 文溪堂
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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プルマンが物語をつくることに目覚めたきっかけは、オーストラリアで読んだバットマンの漫画でした。
バットマンの世界にひたりきって、いきいきした夢を見たかった……生まれてはじめて、物語をつくりたい、と強く思った。そしてすぐに、物語づくりはすごく楽しいものだ、と直感した(p11)
プルマンは1946年生まれ。もはや当たり前のことかもしれませんが、漫画の影響を受けた世代がここまで重厚な物語を紡げるようになったことは感慨深いです。
「ライラの冒険」に直接的な影響を与えた作品はやはりミルトンの「失楽園」です。しかし「ライラ」にはもうひとつ重大な影響を与えた作品があります。それはポール・ベルナの「首なし馬」でした。この作品に登場した少女が幼少時のプルマンの理想の少女となり、ライラのモデルになったそうです。40年も子供の頃の恋が持続するとはなんと一途な。
中学校の教員経験もあるプルマンの読み聞かせに対する意見が刺激的だったので、最後に引用しておきます。
わたしは物語を語る教育を支持します。授業に物語をとりもどすべきだと、それもただちにそうすべきだと考えます。あらゆる種類の物語を。(中略)
そして物語を語るときは、時間にしばられてはいけません。学習計画だの、単元だの、発達段階だのを、気にする必要もありません。そんなものはくそくらえ、です。子どもたちが続きを聞きたがるのなら、どんどん聞かせてやればいいのです。
そして結末までたどりついたら、そこでやめにしましょう。それでその話はおしまい。あとは、物語自身の力にゆだねるのです。ゆめゆめ、かわいそうな子どもたちに「分析」させたり、「意見」をいわせたり、「比較」させたり、「解釈」させたりして、物語をぶちこわしにしないこと。
(p67-p68)