「とんでもないブラウン一家」(アラン・アルバーグ)

とんでもないブラウン一家―お話の中のお話

とんでもないブラウン一家―お話の中のお話

 誰しも多かれ少なかれ自分の人生に不満を持っているもの。ですから、自分の人生をコントロールしている責任者(たとえば作者)の存在が明らかになったとしたら、文句のひとつもいいたくなるのが人情というものです。「海のほとりのスナグルトン」の町に住むブラウン一家は、まさに作者に文句をいう機会を手にします。ブラウン一家は「こんなつまらないお話」を書いているやつがスロープ通りに住んでいることに勘づき、さっそく要望を伝えに押しかけます。

「どうして、もっと変化がつけられないんだろう――毎週おんなじじゃなく。」
「もっと冒険したい!」
「もっとわくわく!」
「おこづかい値上げ!」
「宿題へらして!」
「家事もへらして!」
「……犬、飼いたい。」

 物書きはそれぞれの要望に応えて物語をつくり、スナグルトンの町をしっちゃかめっちゃかにしてしまいます。メタフィクションですが、難しいところはなく気軽に笑って楽しめる作品です。なにしろ物書きですから、どんな力業も可能です。11歳の誕生日を前にした長女は13歳になりたいとわがままをいいます。これを作者が安易に叶えてしまったために起こった悲劇は傑作でした。