「タイドプール」(長江優子)

タイドプール

タイドプール

 第47回講談社児童文学新人賞佳作受賞作。父親の再婚により急に家庭に入り込んできた継母との確執を縦糸に、所属している鼓笛隊で指揮者に抜擢されたことで起こった友達との不和を横糸に、小学五年生の少女の日常が描かれます。
 継母に対するいらだちを「とつぜんあらわれた人に、勝手に自分のうちをいじられた」からだと分析し、それを「嫁姑戦争」と解釈するところ、継母が持ち込んだ水槽が家を浸食していく様子をテトリスにたとえるところなど、なかなか面白い感性を持った新人だと感じました。今の子供(そして保護者)がおかれている風景として「へんしつしゃ情報」をクローズアップした着眼点の鋭さも注目されます。
 全体的にはよくできた作品です。しかし贅沢な注文ですが、デビュー作にしては手堅くまとまりすぎているのが逆に物足りないといえば物足りない。次回作はもっと独自の色を出した作品を見せてもらいたいです。