「バッタの足」(最上一平)

バッタの足 (学研の新・創作)

バッタの足 (学研の新・創作)

 田舎に住む少年和好を主人公とする短編集。最上一平は田舎暮らしを実に魅力的に描いてくる人です。それも「となりのトトロ」のような都会の人間が夢想する田舎ではなく、ごく当たり前の存在としての田舎を描けるのがこの人のすごさです。
 表題作「バッタの足」は和好が石集めが趣味のじいさん次郎さんにつきあわされるお話。むやみやたらに石を持ち帰ってくる次郎さんと、こっそり石を捨てに行く奥さんのみずえさんの攻防が、少年の目を通してほほえましく綴られています。話自体はどうということのないものですが、あたたかいものが胸に残る逸品です。