「かいじゅうムズング」(寺村輝夫)

かいじゅうムズング (フォア文庫)

かいじゅうムズング (フォア文庫)

アフリカのあるカミサマは、なにかにおこると、カミナリをならします。
これは、むかしのはなしではありません。
いまもアフリカのあるところで、カミナリはなっているのです。

 ライオンやキリンやシマウマやインパラやヌーやハイエナやジャッカルやイボイノシシやニンゲンが暮らしているアフリカの大地に、ある時白いかいじゅうムズングがやってきました。カーという乗り物でくさいくろい水を垂れ流し、ガンという細い棒で放れたところにいる動物を一瞬で殺してしまうかいじゅうは、どんどんアフリカを蹂躙していきます。
 ようするに白人がアフリカを侵略するおはなしです。ニンゲンが完全に動物と同列に扱われていて、ヒューマニズムが排されているのがおもしろいです。寺村輝夫のアフリカ観の妥当性はわたしには判断できませんが、野蛮、未開といった西洋的な尺度でははかれない世界のありようを描いている点でこの作品は貴重だと思います。