「魔女の宅急便その5 魔法のとまり木」(角野栄子)

 「魔女の宅急便」の第5巻。キキは相変わらずとんぼさんとの遠距離恋愛に悩んでいます。
 冒頭のエピソードで、、キキはかつての自分と同じように「旅立ち」をしている魔女の少女ライちゃんと出会います。黒ずくめで黒猫を連れているのにキキは自分の同族だと気づかず、軽いボケを見せてくれます。しかしこのふたりを対比させることで、キキの1巻時点からの変化が印象づけられます。深読みすればこれを6巻への伏線と見ることもできるでしょう。
 5巻はいい意味で淡々としていました。空を飛ぶ力の低下やジジとの関係の変化などの困難も訪れますが、3,4巻の時のような暗さはあまり感じられませんでした。これは青年期の課題を乗り越えてキキの精神状態が安定してきたことを物語っているのでしょう。キキの魔力の低下にかかわっているのがタイトルにある「魔法のとまり木」なのですが、単に「イヤケガサス」状態になった魔法がとまり木に休暇にいっていただけという落ちになります。キキはこの先も何度も日常の困難にぶち当たるはずですが、この調子でいけばもうさほど心配する必要はないだろうと思わされます。
 しかし5巻で事態がそこまで進展してしまうとは。心の準備ができていなかったので大変な衝撃を受けてしまいました。こうなると6巻の発売が待ち遠しくてたまりません。