「ラベルのない缶詰をめぐる冒険」(アレックス・シアラー)

ラベルのない缶詰をめぐる冒険

ラベルのない缶詰をめぐる冒険

 頭のいい少年ファーガルには、ラベルのない缶詰を集めるという風変わりな趣味がありました。彼はコレクションの缶詰の中から思いがけないものを見つけてしまいます。同じ趣味を持つ少女シャーロットとの出会いによって謎は深まり、やがて彼の身に危険が迫ることになります。
 主人公の少年少女が「頭がいい」子供であることがしつこいくらい強調されています。ファーガルがシャーロットと初対面するシーンで、この作品において「頭がいい」ということが何を意味しているのかがみもふたもなく明かされます。

女の子は少し頭がよさそうに見えた。そう、まちがいなく、人がしばらく見たあと、「うーん、かしこそうだ」というような女の子だ。そして、みんな、この子がほんとうにかしこければいいと思ってる。そうでなかったらかわいそうだ。その子には女の子としての魅力があまりなかった。(p101)

 ファーガルやシャーロットは「頭がいい」という免罪符がなければ存在することが許されない子供なのです。彼らは寒々とした孤独な世界に生きています。
 作中で起こる事件は都市伝説によくあるような他愛ないネタです。ですが、都市伝説であっても一面の真実をうつすことはできます。この物語に真実があるとすれば、それはやはり子供の孤独に呼応している点にあるのでしょう。
 読後感は悪いです。でもただ悪いのではなく、あさのあつこの解説の言葉を借りれば「おぞましいのに爽快」。奇妙な味の作品です。一読の価値はあります。